ネガティブ女は頑張らない

ネガティブで孤独なOLは頑張って頑張らずに生きたい

Rest In Peace

大好きなバンドが輝きを失って、もう何年になるだろう。



いつしか、すり減る靴のことや、大切なからっぽのことや、真逆のことや、心臓のことや、君のことや、抽象的な精神の歌しか歌わなくなってしまった。


昔のように、ドキッとする音の遊びや、胸をえぐってくるような歌詞の鋭さや、思わず涙してしまう激情が込められた声や、寄り添ってくれるようなあたたかい物語が、もう私には聞こえない。


MVはギラギラした映像ばっかりだし、喉が締まったような狭苦しい声に聞こえてしまうし、プリクラのBGMみたいな音がたくさん聞こえるし、もう私には彼らの価値が聞こえてこない。


昔はいろんな世界へたくさん冒険に行っていた。
彼ら自身のための物語が、私が崇拝する神話になり、眠れない夜の子守歌になり、逆境に立ち向かう声援となった。
それらはまだ私の思い出の中にあって、ほこりを被った宝箱を開けると、少しくすんだ色をしているものの、確かに形を保ったままそこにある。


たまに思い出して見に行くと、正確でなくとも、あの頃の記憶がよみがえってくる。
おそらく宝箱の中に意味はすでにない。
私の過去の気持ちの一片を記憶しておくための、ただの音になってしまった。

しかし、確かに意味を持っていた過去があることを、私はそのがらくたの入った宝箱から何度も教えてもらうのだ。




輝きを失った今の彼らの歌は、もうどれがどれだかわからない。
同じような歌詞に同じような音程。
何より、関心を失った私の心が、それらに意味を持たせまいとしている。



それがわかったとき。
あぁ、もう私に彼らは必要ないのか。と思った。




間違いなく天使だったあの人が悪魔に挟まれているのを見て、歌じゃない世界で幸せを掴んだのを知って、大声で清々しく鳴る安物のギターが聞こえなくなって、そう思った。



神はいなかった。
もしくは、確かにいたけど、いつの間にか死んだ。
私の中の神への信心も死んだ。

どちらにせよ、神話はいつまでも残る。
神話を信じた過去の自分も。

それでいいんだと思う。
私は堕天した天上人を想うより、がらくたの入った宝箱を大切にしようと思う。






今までありがとうございました。愛していました。